人形が撤去された現在の本館展示では、被爆者一人ひとりの生きた証である「遺品」と「遺影」、そして「被爆の証言」が中心に据えられている。展示室に入ると、そこには不気味なBGMも暗闇の過剰な演出もない。
静寂の中に並ぶのは、ボロボロになった女学生の制服や、熱線で歪んだお弁当箱だ。名もなき市民がその日、その瞬間に確かに存在し、理不尽に命を奪われたという事実が、何よりも強く胸に迫る。作り物の恐怖で叫ばせるのではなく、実物の遺品を通して閲覧者自らが悲劇の深さに思いを巡らせる。展示リニューアルプロジェクトが目指したのは、感情のショック療法から、静かなる魂の追悼と対話へのシフトだったのだ。