そもそも、円や穴の集合体に対して恐怖を抱く状態は、医学的に認められた疾患なのでしょうか。結論から言えば、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)において、トライポフォビアは正式な病気として単独登録されているわけではありません。パニック障害などを引き起こし生活に著しい支障が出る極めて重度なケースを除き、医学的には「特異的恐怖症」の枠組み、あるいは単なる「生物学的嫌悪反応」と解釈されます。
学術的な研究では、毒ヘビや毒グモ、病原菌に侵された皮膚病変、寄生虫といった進化上の脅威を直感的に避けるための「防衛本能」がブツブツへの嫌悪感を引き起こすと説明されています。つまり、小さな穴の集まりを見て「気持ち悪い」と感じること自体は、全人類に備わっている正常な生体反応です。
それにもかかわらず、ネット上の情報に触れることで「私は特別な恐怖症なのだ」と集合体恐怖症を思い込み、自ら恐怖の度合いを過剰に増幅させてしまう心理的暗示(ノーシーボ効果)に陥っている人が少なくありません。