脳梗塞の治療において、世界中の救急医療現場で合言葉となっているのが「Time is Brain(時間は脳)」という原則です。脳の血管が詰まり血流が途絶えると、1分間に約190万個の神経細胞が不可逆的な死滅を遂げます。いかに早く閉塞した血管を再開通させるかが、麻痺や言語障害などの後遺症の重篤度を直接左右します。
磯野氏のケースにおいて最大の勝因となったのは、発症から治療開始までの時間が短かったことです。当時認可されていた血栓溶解薬「t-PA(組織プラスミノゲンアクティベーター)」の静脈投与は、発症から4.5時間以内という極めて厳格なタイムリミットが定められています。元夫の躊躇のない通報により、磯野氏はこのゴールデンタイム内に病院へ滑り込み、開頭手術を回避して点滴治療等を中心とした急性期医療を受けることができました。
入院直後は集中治療室(ICU)での絶対安静を強いられましたが、病状の早期安定に伴い、驚くべき早さでリハビリテーションが開始されました。歩行訓練や発声練習など、本人の強い精神力と医療スタッフの献身的なサポートが実を結び、懸念されていた右半身の運動麻痺や重い失語症といった重篤な後遺症は奇跡的ともいえるレベルで回避されました。発症からわずか約3ヶ月後の2015年1月18日、長年レギュラーを務める『はやく起きた朝は…』(フジテレビ系)で公の場への復帰を果たした際、カメラの前で見せた元気な笑顔と滑らかなトークは、医療関係者をも驚嘆させる回復の証でした。