「勝って嬉しいはないちもんめ、負けて悔しいはないちもんめ」「あの子がほしい、あの子じゃわからん、相談しましょ、そうしましょ」――。リズミカルな掛け合いの背後に潜むとされる「怖い意味」について、長年ネット上では以下のようなショッキングな解釈が語り継がれてきました。
噂される都市伝説の筋書きはこうです。江戸時代、飢饉に見舞われた貧しい農村で、子どもを間引く(口減らしする)ため、あるいは遊郭や奉公先へ身売りするために、人買いと親が交渉を行っていた光景を歌ったものだという説。「花」は年端もいかない少女(あるいは命)を指し、「一匁(いちもんめ)」という二木の小銭同然の安値で買い叩かれた。「勝って嬉しい」は良い値で手放せた(あるいは安く買えた)側の歓喜であり、「負けて悔しい」は買い叩かれた側の無念を表している、という解釈です。
さらに「相談しましょ」は、どの子を人買いに差し出すかを家族で選別する残酷な会議であり、「あの子がほしい」は人買いが目利きをしている様を描写しているとまことしやかに語られます。しかし、近世風俗史や児童民俗学の記録をどれほど遡っても、江戸時代に子どもを売買する現場でこの歌が歌われていたという公的記録や手記は一切存在しません。
民俗学の研究者たちが全国の古老から収集した採訪録(一次聞き取り資料)を精査すると、この歌の原型はまったく異なる生活文化から生まれていることが判明しています。なぜこれほどリアルで凄惨な物語が、あたかも史実であるかのように信じ込まれるようになったのでしょうか。