自らが意思表示できなくなった未来に備え、どのような治療を希望し、何を拒否するかをあらかじめ文書として書き残す仕組みが「事前指示書(リビング・ウィル)」である。万が一の時に家族や医師が判断に迷わないよう、具体的な手順を踏んで準備することが重要視されている。
事前指示書を作成する際の具体的な手順は以下の通りだ。第一に、人工呼吸器の装着、人工人工透析の開始、胃ろうによる栄養補給など、どの程度の延命治療を望むか自身の価値観を整理する。第二に、家族や医療代理人、信頼できる主治医とともに、繰り返し話し合いを行う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP=人生会議)」を重ねる。最後に、自らの意思を明確に記載した書面を作成し、署名・捺印の上で保管・共有する。
この分野で長年啓発運動を続けているのが日本尊厳死協会である。同協会は、会員が作成したリビング・ウィルをデータベースとして管理し、救急搬送時や終末期の現場において患者本人の意思が尊重されるようサポートを行っている。尊厳ある意思表明を社会的に担保する組織として、その存在感は年々大きくなっている。