大杉漣さんの魅力は、冷酷無比なヤクザの幹部から、実直で悲哀に満ちた父親、威厳ある国家の要人、コミカルな小悪党まで、瞬時に演じ分ける変幻自在のリアリティにありました。
映画界における最大の転機となったのは、やはり北野武監督作品です。『ソナチネ』での存在感に始まり、『HANA-BI』では下半身不随となり絵を描き始める元刑事を哀愁たっぷりに演じ、日本アカデミー賞優秀助演男優賞に輝きました。『Brother』『アウトレイジ 最終章』など、北野映画の乾いた暴力と静けさのなかに漂う緊張感を体現できる唯一無二の役者でした。
また、2016年のメガヒット映画『シン・ゴジラ』では、未曾有の危機に直面し苦悩する大河内清次内閣総理大臣役を熱演。政治家としての弱さと決断の間で揺れる人間味あふれるリーダー像を作り上げ、作品に強固なリアリティをもたらしました。
テレビドラマにおいても、『警視庁ゼロ係』『緊急取調室』『バイプレイヤーズ』など、作品全体のトーンを引き締める重鎮として欠かせない存在であり続けました。