島本須美さんと宮崎駿監督の運命的な出会いは、ナウシカ公開の5年前に遡ります。1979年公開の映画『ルパン三世 カリオストロの城』で、ヒロイン・クラリス役に抜擢されたことがすべての始まりでした。
当時、劇団活動を経て声優としてのキャリアを歩み始めたばかりだった島本さんですが、その可憐で気品ある声は宮崎監督の脳裏に鮮烈な印象を残しました。のちに『風の谷のナウシカ』の制作が決まった際、ナウシカ役の選考には大規模なオーディションが実施されたものの、最終的に宮崎監督の心を射止めたのは島本さんの声でした。
アフレコ現場での有名なエピソードとして、王蟲(オーム)の幼生を身を挺して止めようとするシーンがあります。火傷を負いながら「来ちゃ駄目!痛いけど我慢して…」と叫ぶ場面で、島本さんはナウシカの苦痛と慈愛を極限のリアリティで熱演。宮崎監督はその迫真の芝居に圧倒され、テストテイクの段階で「素晴らしい、本番もこれでいこう」と唸ったと語り継がれています。