当初「事実無根なので闘いまーす」と宣言し、徹底抗戦の構えを見せていた松本氏が、なぜ一転して訴訟取り下げという選択を下したのか。その背景には、法廷闘争の長期化と立証の困難さという現実的な壁が存在していました。
民事裁判の名誉毀損訴訟において、文春側が「真実相当性(真実と信じるに足る正当な理由)」を証明できれば違法性は阻却されます。さらに、被害を訴える女性が出廷して証言する証人尋問まで進めば、判決確定までに2年から3年以上の歳月を要することは確実視されていました。還暦を迎えた松本氏にとって、芸能界から数年間完全に離脱することは、タレント生命において致命的なブランクを意味します。
松本氏側が発表したコメントでは、「強制性の有無を客観的に証明できる物的証拠は存在しない」と確認したとしつつも、「不快な思いや精神的苦痛を被った女性が存在するのであれば、率直にお詫び申し上げる」と謝罪の意を表明しました。金銭の支払いや示談金は一切発生しない形での決着となりました。
対する週刊文春側も「原告代理人から訴えを取り下げる旨の連絡があり、文藝春秋としてこれに同意した」と発表。双方がこれ以上の争訟を打ち切り、法的には事実上の痛み分けという形で幕を引くこととなりました。