映画配給業界にとっても、過去資産のリマスターは戦略的な柱となっている。東宝株式会社をはじめとする国内大手は、膨大な特撮映画や名作邦画のマスターポジを蔵出しし、順次高精細リマスターを進行させている。なかでも、大友克洋監督の『AKIRA (4Kリマスター版』は、35mmマスターポジからスキャンされただけでなく、芸能山城組によるハイパーソニック・サウンドを192kHz/24bitでデジタル化し、世界中のカルチャーシーンに衝撃を与えた。
海外に目を向ければ、米国のクライテリオン・コレクションが映画保存のゴールドスタンダードとして君臨する。彼らは徹底的なリサーチと監督・撮影監督への綿密な取材に基づき、映画史の金字塔を最高峰のクオリティでパッケージ化し続けている。リマスターとは、商業的な再販であると同時に、人類の視覚文化遺産を劣化の危機から救い出すレスキュー作戦でもあるのだ。