かつて中央競馬の歴史において、「西高東低」は絶対の真理だった。栗東トレーニングセンター所属馬が重賞を勝ちまくり、美浦トレーニングセンター所属馬は苦戦を強いられる。1990年代から2010年代にかけて定着したこの構図は、栗東の施設面における圧倒的な優位性と、質の高い関西の調教師・騎手陣による手腕の賜物とされていた。
だが、その傾いた天秤が急速に水平を取り戻し、さらには東へと傾斜を始めようとしている。その最大の要因は、美浦トレセンで推進された大規模な施設改修だ。特に高低差を大きく確保した新坂路コースの新設と既存設備の抜本的なリニューアルは、関東馬の脚力強化に劇的な変化をもたらした。
「昔は西の馬と併せると手応えで見劣りすることが多かったが、今は全く引き下がらない」。現場の厩務員や調教助手からは、こうした手応えの声が次々と上がっている。馬体の肉体的なタフさだけでなく、メンタル面での勝負強さも格段に向上したのだ。