なぜ童磨には生まれつき喜怒哀楽の感情が存在しないのか。その異常性を決定づけた決定的な出来事が、少年期に起きた両親の凄惨な死亡事件です。
父親は教団の女性信者に次々と手を出した末に狂乱した母親にめった刺しにされて絶命。母親はその直後、発狂して服毒自殺を遂げました。血飛沫が舞う凄惨な現場を前にして、普通の子供であれば恐怖や悲哀で精神を崩壊させてもおかしくありません。しかし、童磨が抱いた感想はあまりに異質でした。
「部屋を汚さないでほしい」「血の匂いが臭いから換気しなければ」――そこに親を失った悲しみや恐怖は一切なく、ただ生理的な不快感と状況の後始末への面倒くささしか感じていなかったのです。この瞬間、彼がいかなる人間的感情も持ち合わせていないことが証明されました。そして「哀れな人間たちを苦痛から解放し、自分の体の中で永遠に生かしてあげることこそが救済(極楽)」という、狂気に満ちた独自の死生観が完成していきました。