当時の開発環境は、現代のクリエイターからは想像もつかないほど過酷だった。使える容量はわずか64キロバイト。現在のスマートフォンで撮影した写真1枚の、何十分の一にも満たない極小のスペースだ。その中に、マップデータ、テキスト、モンスターのグラフィック、そして音楽のすべてを詰め込まなければならなかった。
堀井雄二氏が選択したのは、徹底的な「引き算」だった。カタカナの使用制限はその最たる例だ。容量削減のために使用できる文字を厳選し、限られたセリフの中でいかに感情を揺さぶるか。この制約が、逆にあのシンプルで心に刺さる独特の「ドラクエ節」を生み出すことになったのだから、歴史の妙としか言いようがない。