中村小山三が長年演じ続けたのは、主役を支える腰元、長局の女中、仲居、老女といった女形の脇役でした。歌舞伎において脇役は、主役の格を引き立て、舞台上の時代背景や空気感を一瞬で観客に伝える極めて難易度の高い役割を担います。
小山三の演じる女中は、ただ控えているだけで江戸の情緒や武家の厳格さを立ち上らせる不思議な説得力を持っていました。『髪結新三』の女中お菊、『夏祭浪花鑑』のおつぎ、『籠釣瓶花街酔醒』の仲居など、出番は短くとも観客の記憶に鮮烈に残る名演を連発。「小山三が舞台にいるだけで芝居が締まる」と劇評家や共演者からも絶賛され、名脇役として数々の演劇賞を受賞しました。