黒姫山秀男の代名詞といえば、何と言っても立ち合いの凄まじい衝撃力と、休むことなく前へと出続ける直線的な攻めです。182センチ、140キロを超える鍛え上げられた頑丈な肉体から繰り出される立ち合いのぶちかましは、対戦相手の胸骨を軋ませるほどの破壊力を秘めていました。
その重厚な圧力と止まらない前進力から、いつしかファンや報道陣の間で名付けられたのが「デゴイチ(D51)」という異名でした。当時、力強い馬力で鉄路を走る蒸気機関車のイメージは、愚直なまでに正面から相手を押し倒す黒姫山の取り口に完璧に合致していたのです。
黒姫山はただ力任せに押していたわけではありません。左右から強烈に締め上げる「おっつけ」の技術が極めて高く、相手の差し手を殺しながら一気に前進する技術は、当時の角界でも押し相撲の名手として高く評価されていました。四つに組まれても容易には崩れない強靭な足腰と怪力を兼ね備えていたからこそ、大型力士相手にも一歩も引かない相撲が可能だったのです。