現在の下通エリアで巻き起こっている最大のトピックは、間違いなく「食の重層化」だ。数年前から進む再開発の波は、ただビルを建て替えるにとどまらず、通り全体の食文化を根底から塗り替えつつある。天草の朝獲れ鮮魚を型破りなアプローチで提供するネオ割烹や、阿蘇のあか牛を熟成させてクラフトビールと合わせる路地裏のビストロなど、これまで熊本にはなかった感性の飲食店が次々と産声を上げている。
特に注目すべきは、大通りから一本入った雑居ビルの2階や地下に潜む「隠れ家」の存在だ。観光客向けの大型看板を掲げず、控えめな行灯一つで営業するカウンター酒場には、舌の肥えた地元民が夜な夜な集う。週末の滞在を絶対に失敗したくない旅行者が選ぶべきは、そうした地元の日常に溶け込んだ小箱店だ。郷土料理の枠を軽やかに飛び越えた一皿に出会ったとき、下通という街が持つ本当の懐の深さを知ることになる。