『めしぬま。』の最大のストロングポイントは、主人公・飯沼(いいぬま)の鮮烈なギャップ描写にあります。職場のオフィスでは猫背で覇気がなく、コミュニケーションも器用とは言えない平凡な若手会社員。しかし、ひとたび料理を口に運んだ瞬間、その表情は劇的な変貌を遂げます。
カツ丼の衣を噛み締めた瞬間の吐息、熱々のラーメンをすする際に見せる紅潮した頬、ハンバーグの肉汁が口いっぱいに広がった時の濡れた瞳。作者のあみだむく氏は、料理そのものの美味しさを言葉で長々と説明するのではなく、「咀嚼し、嚥下し、全身で美味を味わい尽くす飯沼の肉体反応」を通して読者の食欲を刺激します。
この表現手法は、従来のグルメ漫画における「詳細な味覚分析」や「食材の産地解説」とは一線を画しています。見る者に強烈な空腹感と一種の艶めかしさを同時に想起させる「恍惚の飯テロ」は、SNSを中心に口コミで急速に拡散されました。