公開された写真群の中で特に注目を集めているのが、自宅の書斎でくつろぐ姿や、お気に入りのコーヒーを淹れている瞬間のカットだ。スクリーンで見せる鋭い眼光はそこにはない。あるのは、一人の初老の男性としての穏やかな日常だ。
小田氏が回想するように、高倉健は私生活において非常に細やかで、美意識の高い人物だった。衣服のたたみ方一つ、家具の配置一つにも妥協を許さなかったという。写真に写り込んだ調度品や彼の私服からは、その徹底したライフスタイルが滲み出ている。私たちが知らなかった「人間・高倉健」の輪郭が、一枚の写真によって鮮明に描き出されていく。