これまで家族の葛藤や社会的テーマを繊細に描き出してきた是枝裕和監督が、一転して重厚なサスペンス・スリラーのジャンルに本格参入したことは、世界中の映画界に大きな衝撃を与えた。日本映画監督協会もその手腕に熱い視線を注いでおり、彼が築き上げてきたドキュメンタリー的な写実主義と、緊張感溢れる劇的スリラーの合体がどのような化学反応を起こすのかが議論されている。
是枝監督ならではの、人間の機微をすくい取る丁寧な演出はそのままに、息もつかせぬミステリードラマの骨組みが組み合わさる。登場人物たちの日常が徐々に狂気へと蝕まれていく様を、緻密なカメラアングルと音響設計で描く手法は、まさに監督としての新たな境界線を開拓したと言えるだろう。