トランプ氏が関税を頻繁に持ち出す理由について、「保護主義への回帰」という言葉だけで片付けることはできません。実務面において、関税は3つの明確な目的を持って運用されています。
第1に、「二国間協議における最強のレバレッジ(交渉カード)」です。WTO(世界貿易機関)のような多国間枠組みを嫌うトランプ氏は、1対1の交渉で圧倒的な経済規模を背景に相手を屈服させる手法を好みます。まず法外な関税率をちらつかせてショックを与え、相手国が米国債の追加購入や対米直接投資、米農産物の輸入拡大などを提示した段階で関税率を緩和する、というディールの方程式です。
第2に、「サプライチェーンの強制的な米国内移転」です。関税によって輸入品の価格競争力を奪えば、日本や欧州、アジアのグローバル企業は「関税を回避するためには米国内に工場を建設し、米国人を雇うしかない」という判断に追い込まれます。実際、半導体やEV、バッテリー分野では巨額の対米投資が相次いでいます。
第3に、「国内減税の財源確保」です。トランプ政権は法人税減税や個人所得減税の延長を掲げており、その財源不足を関税収入で補うという税制シフトの思惑が働いています。