朝ドラ版ではエンターテインメント性を高めるために設定の変更や省略が行われましたが、マッサン 実話 ドラマ 違いを紐解くと、現実の政孝とリタはドラマ以上に過酷な逆境に立ち向かっていました。
1. 摂津酒造・阿部喜兵衛との約束と「幻のウイスキー計画」
詳細を見るドラマでは住吉酒造の社長・住吉大作が政孝のウイスキー造りを資金難から断念せざるを得ない切ない別れが描かれました。史実において政孝を留学させた摂津酒造 阿部喜兵衛もまた、本気で国産ウイスキー製造を目指していました。しかし、第一次世界大戦後の恐慌により摂津酒造の経営は急激に悪化。政孝が持ち帰った渾身のレポート(通称:竹鶴ノート)を前にしながら、ウイスキー事業を断念せざるを得なかった阿部社長は、涙ながらに政孝を送り出したと伝えられています。
2. 太平洋戦争下の「敵性外国人」扱いと特高警察の監視
ドラマ後半で最も緊迫感のあった戦時中のエピソードですが、現実の過酷さは映像化された以上のものでした。太平洋戦争が勃発すると、イギリス出身のリタは特高警察から「スパイ容疑」をかけられ、日常的な監視と嫌がらせを受けます。自宅の床下に無線機を隠しているのではないかと疑われて捜索を受けたり、近隣住民から投石されたりする日々の中でも、リタは「私は日本人・竹鶴政孝の妻です」と毅然とした態度を崩しませんでした。
3. ドラマでは描かれなかった「後継者問題」のリアル
ドラマで描かれた養女・エマの結婚エピソードとは異なり、史実における長女・リマ(房子)と両親の関係には複雑な溝がありました。一方で、政孝の兄の子であり、リタの愛情を一心に受けて育った甥の竹鶴威が正式に養子縁組を結び、政孝の技術と精神を完璧に引き継ぐことになります。威の存在なくして、今日のニッカウヰスキーの世界的成功はありませんでした。