巡礼者にとって、大谷寺は特別な意味を持つ。関東一円に広がる坂東三十三観音霊場の第19番札所として、今も巡礼の白衣を着た参拝者が絶え間なく訪れるからだ。境内に足を踏み入れると、本尊の千手観音像だけでなく、さらに奥へと続く壁面に幾筋もの仏像群が刻まれていることに気づく。
これらは総称して大谷磨崖仏と呼ばれ、釈迦三尊像、薬師三尊像、阿弥陀三尊像など合計10体の石仏で構成されている。平安時代初期から鎌倉時代にかけて順次彫り進められたとされ、それぞれ製作年代による様式の変化を一度に観察できる点も、仏教美術の観点から極めて高い価値を有している。