高校を卒業した尾崎世界観が選んだのは、キャンパスライフではなく、社会の底辺とも言える場所での労働だった。特に知られているのが、製本所でのアルバイトだ。来る日も来る日も、他人が書いた言葉が印刷された紙を束ね、本という形にしていく作業。この皮肉な経験が、彼の言葉に対する執着を狂わせたのかもしれない。
大学に行かなかったからこそ、彼は「正しい言葉」の枠組みに囚われずに済んだ。講義室で教授から教わる文学ではなく、インクの匂いと機械の騒音の中で、身体感覚として言葉を捉えていったのだ。この時期の鬱屈とした感情が、初期クリープハイプの牙を剥くような楽曲群の原動力になったことは明白だ。