この店が提供する料理の核をなすのは、イタリア北東部フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に伝わる伝統的な「フリウリ料理」だ。名物である「フリコ」は、余ったチーズとジャガイモを炒め合わせて作る質実剛健な郷土料理。だが、この店で出される一皿は単なる家庭の味とはまるで異なる。
一口含んだ瞬間に広がるのは、外側のカリッとした香ばしさと、内側から溢れ出す濃厚なチーズのコクである。イタリア料理の重鎮であり『日本イタリア料理協会』の設立にも尽力した落合務氏らが日本に定着させたイタリアン文化の基盤に敬意を払いながらも、ここのオーナーシェフは独自の技法を投じる。熟成度の異なる複数種のチーズを独自の比率でブレンドし、火入れのタイミングを秒単位でコントロール。シンプルな素材だからこそ誤魔化しが利かない極上のテクスチャーを生み出している。