この物語の根幹を支えているのが、過去に戻るための極めて厳格な「4つのルール」だ。どんなに強く切望しても、ルールを破ることは誰にも許されない。
第一に、過去に戻って会えるのは「喫茶店『フニクリフニクラ』を訪れたことのある人」に限られる。見知らぬ場所や、過去に店を訪れたことのない人物のもとへ飛ぶことはできない。
第二に、過去に戻ったとしても、あの「特定の席」から立ち上がることは叶わない。席を離れて外の街へ飛び出すことはシステム上不可能なのだ。
第三に、これが最も残酷であり、同時に作品の核となるルールだが「過去に戻ってどんな行動をとっても、現実は決して変わらない」。すでに起きてしまった出来事や死の運命、破局という結果を覆すことはできない。
そして第四に、タイムリミットの存在だ。過去にいられるのは「コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷め切ってしまうまで」の間だけ。もしコーヒーが冷めてしまう前に飲み干さなければ、過去の席にそのまま縛り付けられ、死者でも生者でもない幽霊となって店にとどまり続けることになる。
一見すると「過去を変えられないなら、戻る意味などないのではないか」と思わせる。しかし、現実は変わらなくとも、過去へ赴くことで「人の心」は変わる。この制約の美学こそが、視聴者の涙腺を激しく揺さぶる仕掛けとなっている。