てんとう虫コミックス第13巻に収録された「ころばし屋」が、なぜこれほどまでに読者に強いトラウマを植え付けたのか。最大の理由は、「感情を持たない機械が淡々と標的を追い詰める生理的恐怖」にあります。
全高わずか十数センチほどの小型ロボットでありながら、その基本スペックと追跡性能は群を抜いています。依頼人が背中のスロットに10円玉を投入し、倒したい相手の名前を告げるとシステムが起動。標的がどこに逃げようとも足元へ音もなく忍び寄り、右腕に仕込まれた空気銃から強烈な圧縮空気を放って相手の足を払います。
ただ「転ばせる」だけのアクションでありながら、劇中での描写はまるで本格サスペンス映画のワンシーンです。遮蔽物に隠れても壁の隙間から銃口がのぞき、逃げ惑う標的の視界の端に必ず黒い影が映り込む――。言葉を発さず、目撃者を意に介さず、ひたすら標的の転倒だけを目的に動く姿は、まさに少年漫画の枠組みを超えたホラーそのものでした。