幼い頃に家を追われ、道頓堀の芝居茶屋「岡安」でお茶子として働き始めた千代は、舞台の魔力に取り憑かれて女優への道を歩み出します。京都の映画撮影所での下積みを経て大阪へ戻り、一平と共に「鶴亀家庭劇」を旗揚げ。戦争の激動期を乗り越え、上方演劇界のトップへと上り詰めます。
しかし戦後、松竹新喜劇の旗揚げ直後に一平の不倫と相手女優の妊娠が発覚。絶望の中で離婚を決意した千代は、道頓堀を去り消息を絶ちます。京都で静かに隠遁生活を送っていた千代を再び表舞台へと引き戻したのは、NHK大阪放送局が企画したラジオドラマ『お父さんはお人好し』のオファーでした。
花菱アチャコをモデルとした花車当郎(塚地武雅)との息の合った掛け合いは日本中を熱狂させ、千代は「大阪のお母さん」として劇的な復活を遂げます。最終回では、かつて自分を裏切った一平や劇団の仲間たちが待つ舞台へと再びゲストとして立ち、過去のすべての喜びも悲しみも芝居の糧として昇華する姿が描かれました。人生の不条理を受け入れ、それでも前を向いて歩き続ける力強い結末は、多くのファンの涙を誘いました。