皇室の日常を間近で見守ってきた元侍従や女官たちの証言は、公式文書には残りえない貴重な宮中秘話を伝えている。戦中・戦後の食糧難の時代、お二人は国民の苦難に想いを寄せ、質素な食卓を共に囲まれた。夜遅くまで机に向かう昭和天皇の傍らで、香淳皇后が静かに控え、そっと温かいお茶を差し出す。そんなささやかな日常の所作に、互いへの深い慈しみがあふれていたという。
後年に編纂された数々の伝記や手記にも、二人のユーモアに富んだやりとりが記録されている。宮内庁関係者の述懐によれば、緊張感に満ちた政治の裏側で、お互いを「お上」「皇后様」と呼び合いながらも、二人きりの時間には飾らない笑顔を見せていた。周囲を和ませるその穏やかな空気感こそが、激動の時代を乗り越える原動力となっていたのである。