人面魚ブームの震源地となったのは、山形県鶴岡市にある曹洞宗の古刹・善宝寺(ぜんぽうじ)の境内にある「貝喰の池(かいばみのいけ)」です。古くから龍神信仰の聖地として知られていたこの池で、1990年春、参拝客によって「人の顔にそっくりなコイが泳いでいる」と話題になり始めました。
火付け役となったのは写真週刊誌『フライデー』のスクープ記事でした。水面から顔を覗かせるコイの頭部が、まるで憂いを帯びた人間の男性の顔のように写し出されたその写真は、瞬く間に全国へ拡散。連日ワイドショーが生中継を行い、善宝寺周辺の道路は何キロメートルにもわたる大渋滞を記録しました。
寺院側も対応に追われ、池の周囲には転落防止用の柵が急遽設置される事態に。現地では「人面魚せんべい」やキーホルダーなどの記念品が飛ぶように売れ、1年間の観光客数が数十万人規模で急増するなど、平成初期を象徴する一大観光ブームへと発展したのです。