一夫多妻制をめぐる実態は、都市部と農村部(地方部)の間で極めて鮮烈なコントラストを描いています。この傾向は中東のみならず、伝統的な複婚が色濃く残るアフリカ諸国(ナイジェリア、ケニア、セネガル等)においてより顕著です。
地方農村部:労働力と共同体維持のインフラ
地方の農村地域では、一夫多妻制が依然として経済的合理性を持っています。農業や牧畜が主産業であるエリアでは、家族の人数がそのまま労働力となり、一族の勢力を拡大する基盤となるためです。住居も広大な土地に簡素な伝統家屋を増築する形で対応できるため、都市部のような莫大な家賃負担が発生しません。地域社会全体で子供を育てる文化も残っており、妻たちの間での家事・育児分担が機能しやすい側面があります。
大都市部:女性の自立と婚姻契約(婚前契約)の普及
対照的に、ナイロビやラゴス、カイロ、リヤドといった大都市では、女性の高等教育進学率と就業率が飛躍的に向上しました。自ら十分な収入を得て自立する都市部の女性たちにとって、夫の複数妻という立場を受け入れるメリットはほぼ存在しません。
特に近年のアラブ諸国で定着しているのが、婚姻契約書(イスラム法上の正式な結婚契約)における特約条項の活用です。婚姻時、女性側は「夫が第二夫人を娶った場合、第一夫人は無条件で離婚を請求でき、慰謝料と財産分与を全額受け取る権利を有する」という条項を法的に盛り込む権利を行使しています。
自立したキャリアを持つ現代女性は、不合理な複婚を拒絶する明確な法的手段を手に入れており、これが都市部における一夫多妻の抑止力として強く機能しています。