事の発端は2010年10月、尖閣諸島沖での漁船衝突事件をきっかけに日中間の緊張が極度に高まっていた時期に遡ります。中国各地で大規模な反日デモが勃発し、現地のネット掲示板やSNS上には日本人を罵倒する言葉として「日本鬼子(リーベンクイズ)」というフレーズが溢れかえっていました。
もともと「日本鬼子」とは、日中戦争の時代から使われてきた歴史ある蔑称です。「鬼子」とは悪魔や化け物を意味し、日本人に対する強い侮蔑と敵意が込められた言葉でした。通常であれば政治的な対立や感情的な言い争いに発展する局面ですが、日本の巨大掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」のニュース速報(VIP)板の住人たちが下した決断は、誰も予想し得ないものでした。
「日本鬼子って萌えキャラを作って、中国人を萌え萌えにしてやろうぜ」
この一本のスレッドから、後に世界を巻き込む「日本鬼子プロジェクト」が急速に動き出しました。相手の悪意に対して怒りで応酬するのではなく、「日本鬼子」というキーワードで検索した際に画面いっぱいに可愛らしい美少女イラストが表示される状態を目指すという、いわば検索エンジンハッキング(Google爆撃)を逆手に取った文化的な無毒化作戦が幕を開けたのです。