全米スチール労働組合(USW)の本部が置かれるペンシルベニア州ピッツバーグ。かつて買収劇に対して最も激しい拒絶反応を示したのは、まさにこの街の組合幹部たちだった。「外資に雇用が奪われる」「歴史あるブランドが切り売りされる」といった危機感が煽られたのは記憶に新しい。
しかし、現場の作業員たちが抱いていた本音は少し異なる。彼らが恐れていたのは買収そのものではなく、資金不足による工場の突然の閉鎖と解雇通告だった。最新の設備投資が約束され、高炉の改修工事が具体化するにつれて、対立の図式は徐々に実利的なパートナーシップへとシフトしていった。組合側が要求した雇用維持と安全基準の遵守に対し、事業主側が妥協のない資金拠出で応えたことが、現場の信頼を獲得する最大の鍵となった。