周囲に家族やマネージャー、スタッフが囲んでいながら、なぜ異変に気づき防ぐことができなかったのでしょうか。そこには産後うつ特有の「見えにくさ」と「急速な悪化スピード」が存在します。
第一の理由は、「周囲から見て元気に振る舞えてしまう(微笑みうつ病)」という点です。重度の抑うつ状態にありながら、他人の前では気丈に笑顔を作り、礼儀正しく対応してしまうため、周囲は「順調に育児をこなしている」と誤認してしまいます。
第二に、「睡眠遮断による判断力の著しい低下」です。新生児の頻回授乳や夜泣きによって脳が休まらない状態が続くと、論理的な思考ができなくなり、突発的な衝動や「自分がいない方が家族のためになる」という歪んだ妄想(微小妄想・罪業妄想)に支配されてしまいます。
見落としてはならない危険サインには、以下のような日常の些細な変化が含まれます。
- 子どもが寝ているのに、自分は目が冴えてまったく眠れなくなる
- 普段楽しんでいた趣味やテレビ番組、食事に一切の興味を示さなくなる
- 「私が悪い」「迷惑をかけて申し訳ない」と過剰な謝罪を繰り返す
- 急に身の回りの整理を始めたり、大切な私物を他人に譲ろうとする
- 赤ちゃんの泣き声に対して、感情が完全に麻痺したような無表情になる