小説家として名を馳せる前、伊集院氏は「伊達歩(だて あゆむ)」というペンネームで数々のヒット曲を手掛けるトップ作詞家としても時代を築きました。言葉数を削ぎ落とし、情景と感情を一瞬で焼き付ける卓越した言語センスは、昭和の歌謡界に鮮烈なインパクトを残しました。
代表作には、近藤真彦さんの代表曲である『ギンギラギンにさりげなく』や、第29回日本レコード大賞を受賞した『愚か者』があります。また、アン・ルイスさんの『六本木心中』のタイトル命名や世界観のプロデュースにも関わるなど、都会的でスリリングな男と女の情念を巧みに表現しました。
作詞家として培われた「簡潔にして芯のある言葉選び」は、後の小説やエッセイの文体にも色濃く受け継がれており、伊集院文学の根幹を成す重要な要素となっています。