80年代から90年代にかけて、角替和枝の名はテレビドラマや映画のクレジットで欠かせないものとなっていく。彼女が演じたのは、どこにでもいる近所のおばさんであり、同時に、絶対にどこにもいない狂気を秘めた隣人だった。
日常の延長線上にあるおかしみや悲哀を、わずか数秒のカットで表現する技術。主役を引き立てながらも、観客の脳裏に爪痕を残す。この絶妙なバランス感覚こそが、彼女の真骨頂だった。大林宣彦監督作品をはじめとする日本映画の名作群において、彼女の存在は作品のリアリティを担保する強固なアンカーとなっていたのだ。