車を止めたり急減速したりする際、私たちが真っ先に踏み込むのがフットブレーキだ。四輪のブレーキディスクやドラムに摩擦材を押し当てて直接車輪を止めるため、強力かつ即効性のある制動力が得られる。しかし、長い下り坂でこの操作だけに頼り続けるのは極めて危険だ。
箱根や日光といった長大かつ急勾配の下り坂でフットブレーキを連続使用すると、強烈な摩擦熱が発生する。これによりブレーキパッドの摩擦力が急激に低下する「フェード現象」が引き起こされる。ペダルを踏み込んでいるのに、まるで氷の上を滑るように車が減速しなくなる恐怖の事態だ。
さらに過熱状態が進行すると、ブレーキ液内部に気泡が生じ、ペダルの油圧が車輪に伝わらなくなる「ベーパーロック現象」へ発展する。こうなるとペダルはスカスカになり、ブレーキは完全に効力を失う。エンジンブレーキを併用してフットブレーキの負担を逃がすことこそが、山道での惨事を防ぐ唯一の予防策なのだ。