「いやあ、まいったまいった。バカには勝てん」——シシ神の首をアシタカとサンに返し、壊滅した森の惨状を見つめながらジコ坊が口にするラストの台詞は極めて象徴的だ。彼はシシ神の恐怖に慄きながらも、どこかサバサバとした諦念を漂わせている。
劇中初期に彼が呟いた「誰もがすねに傷持つ身」という言葉通り、彼自身もまた国家権力と己の生存の狭間で綱渡りを続けていた一人に過ぎない。失敗すれば師匠連から消される危険すら孕んでいた任務。その極限状態を、軽妙な口調と老獪な立ち回りで生き延びたジコ坊の姿には、ある種のたくましさと哀愁が漂っている。