無名塾で10年におよぶ地道な研鑽を積んだ滝藤に、ついに千載一遇のチャンスが訪れる。2008年公開の映画『クライマーズ・ハイ』(原田眞人監督)への出演だ。日航機墜落事故を追う新聞記者たちの壮絶な現場を描いたこの傑作で、滝藤が演じたのは精神的に追い詰められていく地方新聞記者・神坂勝陰役だった。
極限状態のストレスから精神を病み、鬼気迫る表情で狂気を孕んでいく神坂の姿は、観客や映画関係者に強烈なインパクトを与えた。狂気と途方もない悲哀が同居するその演技は「あの凄まじい役者は誰だ」と映画界を騒然とさせた。当時すでに30代を迎えていた彼にとって、まさに劇団時代の下積みが一気に結実した劇的な瞬間だった。