丸山真男の名を不動のものとしたのは、『日本の思想』だけではない。『現代政治の思想と行動』をはじめとする一連の著作は、終戦直後の虚脱状態にあった日本人に強烈な知的衝撃を与えた。権力的威圧と超国家主義の構造を病理学的に解剖した彼の論文群は、政治学の概念を一変させたと言っても過言ではない。
とりわけ岩波書店が発行する岩波新書などの文庫・新書レーベルを通じて発信された思想は、学者や学生の狭い部屋を飛び出し、一般市民の書棚へと広く浸透していった。出版・学術の連携がもっとも熱を帯びていた時代、丸山の言葉は新しい民主主義の航海図として、多くの人々に貪るように読まれたのである。