街の再生を導くのは技術だけではない。人だ。東日本大震災によって山形県への避難と再起を余儀なくされた「鈴木酒造店」が浪江の地に完全復活を果たして以来、地元のシンボルとしての存在感はますます増している。代表銘柄「磐城壽(いわきことぶき)」の芳醇な香りは、街の誇りそのものだ。
この伝統の酒蔵の周辺に、近年劇的な変化が起きている。首都圏や海外から移住してきた気鋭のクリエイターやITベンチャーの起業家たちが続々とオフィスを構え始めたのだ。古民家をリノベーションしたシェアオフィスでは、伝統工芸の職人とWeb3のエンジニアが肩を並べて仕事をしている。若者が持ち込む新しい感性と、地元で代々受け継がれてきたカルチャーが衝突し、新たな化学反応を生み出している。人口の絶対数は震災前には及ばないものの、住民一人ひとりが持つ熱量とクリエイティビティの濃度は、全国のどの都市よりも高い。