彼の演出の代名詞といえば、軽妙洒脱なテンポ感と、登場人物たちの絶妙な掛け合いだ。特に『HERO』で見せた城西支部のメンバーによる群像劇は、今見返しても全く古さを感じさせない。キャラクター一人ひとりが勝手に喋っているようでいて、全体として完璧なハーモニーを奏でている。
この「計算された混沌」こそが、彼の真骨頂だ。役者のアドリブを活かしているように見えて、実はカメラの画角やセリフの間(ま)がミリ単位でコントロールされている。役者の魅力を最大限に引き出しつつ、物語のレールからは決して脱線させない。この職人技とも言えるバランス感覚が、時代を超えて愛される作品を生み出す源泉なのだろう。