ラサール石井さんと『こち亀』の結びつきを語る上で絶対に外せないのが、舞台版『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の存在です。声優がキャラクターの声を担当するだけでなく、自ら特殊メイクなしで眉毛を繋げ、ゲタを履き、舞台上で歌い踊る姿は演劇界に衝撃を与えました。
舞台版は1999年の初演を皮切りに、2001年、2003年、2006年、そして連載完結を迎えた2016年の20周年記念公演まで計5回上演されました。特筆すべきは、ラサール石井さんが主演(両津勘吉役)だけでなく、自ら脚本・演出まで手掛けたという点です。
原作のエピソードを再構成しつつ、ミュージカル仕立てのエンターテインメントへと昇華させた手腕は高く評価されました。舞台上を所狭しと駆け回り、アドリブを連発しながら観客を巻き込む熱量は、まさに両津勘吉そのもの。客席には原作ファンから子ども連れのファミリー層まで幅広い層が詰めかけ、チケットは連日完売を記録しました。
「自分の中に両津が棲みついている」と語るほど作品に心血を注いだラサール石井さんの情熱は、2.5次元舞台という言葉が定着する遥か以前から、漫画と舞台芸術の見事な融合を成立させていた先駆的な功績といえます。