本作で主演を務めたチョン・ウヒの演技は、今見返しても息をのむ。彼女の瞳に宿る絶望と、それでも捨てきれない生への執着。そのアンバランスさが、観る者の胸を締め付ける。特に、彼女がプールで泳ぎを習うシーンは象徴的だ。「泳げるようになれば、もしもの時に死なずに済むから」。その言葉の裏にある悲痛な決意に、言葉を失わない者はいないだろう。
映画は、彼女を救おうとする数少ない人々も描き出す。しかし、その善意すらも、圧倒的な社会の冷淡さの前にかき消されていく。私たちは映画を観ながら、知らず知らずのうちに「何もしなかった傍観者」の列に並んでしまっているのではないか。その恐怖を、チョン・ウヒの鋭い眼差しは突きつけてくる。