日本語の「妾」を英語に翻訳する際、中心となるのがconcubine(コンキュバイン)とmistress(ミストリス)の2語です。一見すると同義語のように扱われがちですが、言語社会学的なアプローチで見ると、法的位置づけと公認度において明確な境界線が引かれています。
concubineは、一夫多妻制や側室制度が公的に認められていた時代・文化圏において、「正妻(legal wife / principal wife)よりも低い身分で家庭内に同居・公認されていた女性」を指します。古代ローマ法(concubinatus)や中国の後宮制度、日本の武家社会における側室が典型例です。公的な地位を持ち、生まれた子どもが跡継ぎとして認知される権利関係を含蓄しています。
一方、mistressはキリスト教的一夫一婦制の価値観を背景に発展した言葉です。「法的な婚姻関係を結んでいる男性と、継続的な性的・親密な関係を持ち、経済的な支援(手当や住居など)を受けている婚姻外の女性」を指します。基本的に法律上の公認地位はなく、秘密の関係であるか、公知の事実であっても家庭外の存在として扱われます。