この問題の根底にあるのは、相容れない二つの正義だ。一方は、自宅で穏やかに過ごす権利を主張する「静寂派」。もう一方は、のびのびと子供を育てたい「子育て派」である。かつて昭和の時代には当たり前だった「路地裏で遊ぶ子供たち」の風景は、今や都市部や新興住宅地において、激しい非難の対象へと変貌した。
「リモートワークが定着し、家が職場になったことで、外の音が許容できなくなった」と語るのは、都内のIT企業に勤務する40代男性だ。彼にとって、隣家の子供が道路で一輪車の練習をする音は、精神をすり減らす拷問に等しいという。一方で、標的とされた母親はこう嘆く。「公園はボール遊び禁止、自転車も禁止。じゃあどこで遊べばいいのか。監視されているようで、息が詰まる」。