本名は「水谷趣里」ですが、芸能活動をスタートさせる際、彼女は迷わず名字を外した「趣里」という名前を選びました。そこには、「水谷豊と伊藤蘭の娘」という看板を完全に遮断し、純粋に一人の無名俳優としてオーディションを勝ち抜くという固い覚悟がありました。
デビュー初期のドラマ『3年B組金八先生ファイナル』(2011年)や舞台活動において、キャスティング側が彼女の両親を知らないまま起用したケースも少なくありませんでした。小劇場での地道な稽古、過激な役柄や精神的に追い詰められる難役にも果敢に飛び込み、演出家たちから「底知れないエネルギーを持つ女優」と評価を高めていったのです。
その努力が結実したのが、2,471人が応募したオーディションを自力で突破して掴み取ったNHK連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロイン・福来スズ子役でした。笠置シヅ子をモデルとした難役において、バレエ留学で培った驚異的なリズム感と身体性、そして泥臭い喜怒哀楽を爆発させた演技は、日本中の視聴者に「趣里という唯一無二の女優」の存在を刻み込みました。