現代の視点から五箇条の御誓文を読むと、「万機公論に決すべし」「庶民に至るまで各々其の志を遂げ」といった言葉から、「明治維新の最初から国民主権や民主主義を目指していた」と受け取られがちです。しかし、これは歴史教育における代表的な誤解の一つです。
当時の新政府首脳陣が目指していた「公論」とは、一般国民による普通選挙や多数決ではありませんでした。対象とされていたのは、あくまで諸藩の武士層や知識層です。当時の政治体制において、農民や町人に参政権を与えるという発想はまだ存在していませんでした。
それでもなお、この誓文が歴史的転換点とされる理由は、「旧幕府の徳川家による専制政治を否定した」という一点にあります。「一部の門閥や独裁者が密室で物事を決める時代は終わった」と公式に宣言したこと自体が、当時の封建社会においては極めて過激なパラダイムシフトでした。
💡 コラム:誓約書にサインした大名たちの心理御誓文が読み上げられた際、公家や大名ら400名以上が署名を行いました。彼らの多くは「新しい時代の理念」に心から共鳴したというよりは、「新政府に恭順しなければ朝敵(敵軍)とみなされる」という政治的圧力の中でサインを迫られていました。理念の裏には冷徹な権力闘争が存在していたのです。