宇宙世紀0079年1月、地球連邦軍とジオン公国軍の間で勃発した一年戦争の初期において、勝敗の行方を決定づけたのがルウム戦役でした。この戦いでジオン軍の一士官に過ぎなかったシャア・アズナブル中尉(当時)は、紅いパーソナルカラーに染め上げられた専用機「MS-06S ザクII」を駆り、連邦軍の宇宙戦艦5隻(マゼラン級戦艦1隻、サラミス級巡洋艦4隻)を一戦で撃沈するという驚異的な戦果を挙げます。
レーダーが使用不能となるミノフスキー粒子散布下において、光学照準に頼らざるを得ない連邦軍将兵の目に焼き付いたのは、深紅の軌跡を描きながら宇宙空間を跳梁する一機のモビルスーツでした。その軌跡がまるで夜空を切り裂く不吉な天体に見えたことから、連邦軍将兵は恐怖を込めて彼を「赤い彗星」と呼び始め、瞬く間にジオン・連邦双方の全軍にその名が轟くこととなりました。
当時の連邦軍艦艇クルーの間では「赤い機体を見たら即座に退避せよ」「交戦規定を無視して撤退しても敵前逃亡に問われない」という暗黙の了解が生まれたほどです。この一戦を契機に、シャアは中尉から少佐へと二階級特進を果たし、ジオン公国のプロパガンダの象徴としても祭り上げられていくことになります。