輜重兵とは、旧日本陸軍において軍隊の作戦行動に必要な弾薬、食糧、被服、医薬品などの輸送と補給を担当した兵科です。近代戦において「兵站(ロジスティクス)」が勝敗を決定づけることは軍事学の常識ですが、日本陸軍における輜重兵は、師団ごとに編成された「輜重兵連隊」を中心に配属され、最前線から後方拠点までを馬匹(ばひつ)や車両を用いて結び続けました。
輜重兵の役割と任務は多岐にわたります。馬に荷を引かせる「輜重車(三九式輜重車など)」の操縦、険しい山岳地帯で馬の背に直接物資を載せる「駄載(ださい)」、さらには日中戦争以降に本格導入された自動車部隊による輸送など、極めて高い専門技術が求められました。また、単に荷を運ぶだけでなく、敵のゲリラ攻撃や伏兵から輸送隊を守るための自衛戦闘訓練も課されていました。
組織内の階級制度自体は、歩兵や砲兵などの他兵科と全く同一です。二等兵から始まり、一等兵、上等兵、兵長、下士官(伍長・軍曹・曹長)、そして陸軍士官学校を出た将校(少尉・中尉・大尉など)に至るまで、同一の階級呼称が用いられました。しかし、徴兵検査における配属基準において、体格甲種の上位層が近衛歩兵や騎兵・砲兵に優先配分され、体格や視力などで次点とされた者が輜重や衛生に回される傾向が強かった事実が、組織内での格差意識を醸成する一因となったことは否定できません。