「息子の結婚式も、会社の創立記念パーティーも全部ここでした。なくなる時は本当に寂しかったですよ」
近くで長年喫茶店を営む70代の男性は、施工フェンスの隙間から工事現場を眺めつつ、感慨深そうに呟く。国営の郵便貯金事業に端を発するこの施設は、リーズナブルな価格設定と手厚いサービスで、長年「庶民のフォーマルな場」として親しまれた。昭和から平成、令和へと至る時代の節目において、地元住民の人生のイベントに寄り添い続けてきた歴史は重い。
それだけに、解体工事の開始当初は寂しさを訴える声も少なくなかった。しかし老朽化に伴う修繕コストの増大や耐震性の問題など、時代の波には抗えなかったのも事実だ。いま地元の人々が期待しているのは、過去のノスタルジーを超えた、新しい活気の創造である。