所持人記入欄の廃止によって生じた最も身近な混乱が、「国内の各種手続きでパスポートが身分証明書として単体利用できなくなった」という問題です。金融機関の窓口や不動産契約、携帯キャリアのショップなどでパスポートを提示したところ、受付を断られたり追加書類を求められたりするケースが急増しました。
この背景には、犯罪収益移転防止法(犯収法)の施行規則改正があります。国内法規上、本人確認書類として認められるためには「氏名・生年月日・現住所」の3要素が公的に証明されていなければなりません。所持人記入欄がなくなった2026年旅券には、外務省が発行した公的な「現住所」の印字が存在しないため、法律上の「住所確認書類」としての要件を満たせなくなってしまったのです。
外務省も公式見解として、パスポートは「渡航先において所持者の身分を証明し、必要に応じて保護・援助を求めるための公文書」であり、国内における住所証明を目的とした書類ではないことを明確にアナウンスしています。日常的な本人確認の場において、パスポートはかつての「万能な身分証」の座を完全に降りたと言えます。